はじめに
現代の社会は急速に高齢化が進行しており、特に日本では超高齢社会の到来が避けられない現実として私たちの目の前にあります。
このような社会構造の変化に伴い、企業はミドル・シニア世代の活躍をどのように促進するかを真剣に考える必要があります。
宮島忠文と小島明子が著した『ミドル・シニアは欠かせない人的資本になれる!』は、まさにそこに着目し、読者に「どうすればシニア社員のモチベーションを維持し続け、企業にとって欠かせない存在になれ得るのか」を考えさせる一冊です。
ミドル・シニアが直面する現実
シニア世代が職場で直面する主な問題の一つは、「裏切られた」と感じる瞬間です。
役職を外され、年収が大幅に減少し、仕事へのモチベーションが大きく低下するという経験が、シニア社員を取り巻く現状にあります。
これに伴い、多くのミドル・シニアは、職場において「妖精さん」と揶揄されることすらあります。
このような状況に陥ると、企業に対する不信感が高まり、自分自身のスキルアップやリスキリングに対しても後ろ向きになってしまう可能性があります。
しかし、現在日本では、65歳までの継続雇用が義務化され、さらに70歳までの就業機会確保が努力義務として取り組まれています。
これはまさに「定年がなくなる時代」の幕開けを意味し、経済活動の現場においても、このようなシニア社員が抱える問題を解決し、彼らの能力を最大限に活用することが求められています。
ミドル・シニアの活躍を支援するカリキュラム
本書では、宮島忠文と小島明子が実際に現場で得た知見から、ミドル・シニア世代の活躍を支援するためのカリキュラムが紹介されています。
これらのカリキュラムでは、個人のキャリア意識の現状から社会構造的な視点をも交えながら、労使双方が抱える課題を浮き彫りにし、解決策を提案しています。
具体的には、泥臭い支援の現場で得られた知見や調査データが用いられ、現在の企業が直面する問題に対してどのようにアプローチすればよいのかが示されています。
このアプローチには、企業がどのようにして「働き続けてほしい」シニアを増やすことができるのか、という明確な道筋が立てられています。
働き続けてほしいシニアとは
「働き続けてほしい人」の要件として、本書では10のキーワードが提示されています。
これらのキーワードは、シニア社員が自らのキャリアを形成し、職場で引き続き価値ある存在となるための指針となります。
具体的な例を挙げると、シニア社員は多様な経験を活かし、若手社員の育成に貢献することが求められます。
そのためには、自らのスキルを磨き上げ、知識を絶えず更新していく姿勢が大切です。
また、モチベーションを保ち続けるためには、組織内でのコミュニケーションの活性化や、自己成長を実感できる環境づくりも必要です。
シニア社員が居心地よく、生産性を発揮できるためには、企業側の積極的なサポートも不可欠です。
本書ではこれらのポイントを具体的に解説しており、代替可能なミドル・シニア人材の増産を防ぐ一助となることでしょう。
新たな働き方への挑戦
超高齢時代の到来とともに、働き方そのものも変革が求められています。
その一つの解決策が「労働者協同組合」のような新しい働き方です。
従来の組織体系に囚われることなく、仲間と共に新たな価値を創造していくこのアプローチは、ミドル・シニアにとっても大きな可能性を孕んでいます。
労働者協同組合では、自己の意欲とスキルを存分に活かしながら、柔軟な働き方を実現できます。
このような働き方への転換は、シニア社員が自分自身のペースで働き続けながら、社会に貢献し続けることを可能にします。
本書では、そうした新しい働き方が具体的にどのように実現可能かを、一歩踏み込んだ解説で読者に伝えています。
超高齢社会における人事設計のポイント
超高齢社会に適した人事設計として、本書では具体的なポイントが示されています。
この設計の要点は、ミドル・シニア世代が持つポテンシャルを最大限に引き出すことに重点を置いています。
例えば、年次にとらわれない評価制度や、多様なキャリアパスを用意することで、彼らに新たな活躍の場を提供します。
他にも、シニア社員が持つ貴重な経験やスキルを組織全体で共有し、生産性向上やイノベーション創出に繋げる仕組みづくりも重要です。
これにより、シニア社員自身も「まだまだ自分は活躍できる」という自信を持ち、積極的に仕事に取り組む姿勢を持つことができるでしょう。
まとめ
『ミドル・シニアは欠かせない人的資本になれる!』は、ミドル・シニア世代がどのように職場で活躍し続けられるかを、具体例を交えながら探る一冊です。
著者たちは実際の支援現場での知見と豊富な調査データをもとに、ミドル・シニアのキャリア形成支援の鍵を示しています。
読者はこの本を参考に、自分自身のキャリアを客観的に見つめ直し、新たな可能性を探ることができるでしょう。
企業にとっても、シニア社員が持つ豊富な経験値を最大限に活用するために必要な視点を与えてくれるでしょう。
長寿化が進む日本社会において、シニア世代が有意義に働き続けるためのヒントを探し求めている方々に、この書籍は必携の一冊です。